INTERVIEW

鈴木友里絵インタビュー 渋谷クアトロワンマン『ON STAGE』に向けて

シンガーソングライターの鈴木友里絵(すずき・ゆりえ)が、2019年2月12日、東京・渋谷『CLUB QUATTRO』にてワンマンライブ『ON STAGE!』を開催する。今回のライブで、鈴木は「自分を証明したい」と語る。それはいったいどういうことなのか? インタビューを通して、鈴木友里絵とはどんなアーティストなのか、深掘りしてみることにした。幼少期の思い出から、音楽を続ける理由、今後の展望まで。
聞き手・山田宗太朗

鈴木友里絵と音楽の出会い

ーー鈴木友里絵さんのあだ名は「すー」さん、だそうですが、由来は何ですか?

鈴木:お母さんが保護者会で付けられたあだ名が「すーさん」で、それをジュニアのわたしが引き継いじゃったんです。

ーー保護者会であだ名をつけられる親ってちょっと珍しくないですか? ひょうきんなお母さんなんでしょうね。

鈴木:すごいひょうきんな人です(笑)。小4くらいの頃にお母さんからこのあだ名を引き継ぎました。ファンの方からは「すーちゃん、すーさん」もしくは「友里絵ちゃん」って呼ばれてます。

ーーどっちの呼び名が好きなんですか?

鈴木:どっちも好きなんですけど、「すーさん」だと『釣りバカ日誌』のスーさんが思い浮かんじゃうので、「すーちゃん」の方が嬉しいです。「友里絵さん」は後輩にそう呼ばれた時に「すごくいいなあ、好きだなあ」と感じて。ずっと「すーさん」って呼ばれてきたから、名前で呼ばれるのが新鮮なんです。

ーーじゃあ「友里絵さん」と呼ぶことにします。友里絵さんが本格的に音楽活動を始めたのは19歳の頃だそうですが、まずはそれ以前の音楽体験について聞かせてください。

鈴木:小さい頃、お母さんが毎晩、本の読み聞かせをしてくれてたんです。その時にいつも、最終的に「おうたうたって~」って頼んでたんですよね。だからいちばんはじめの音楽はお母さんの歌だったのかもしれない。あとは、3つ下の妹と一緒によくふざけて歌っていて、それをお父さんが録音していたのを覚えています。

ーーお父さんは音楽関係の方なんですか?

鈴木:いえ、全然関係なくて、単に思い出として残しておきたかったんだと思います。

ーーエモいお父さんですね。

鈴木:そうですね(笑)。エモいお父さんとひょうきんなお母さんのもとで育ちました。小さい頃からミュージカルを観せてもらうことが多くて、それで歌が好きになりました。人前で初めて歌ったのは中学2年の時です。「3年生を送る会」という、学校全体で行う大きめのイベントがあって、そこでの出し物としてKiroroさんの『未来へ』を歌うことになったんです。普段はイジられキャラだったので、友だちにはわたしが歌うということは内緒にしておきました。当日、講堂のステージに立って幕が上がった瞬間、みんながザワッとしたのがわかりました。「えっ、なんですーさんがいるの?」って。でも歌った瞬間にそのザワつきが消えて、みんな驚いた顔になったんです。

ーーそれは気持ち良かったでしょうね。

鈴木:終わったあとに、いろんな人が「よかったよ!」って話しかけてくれて。「もしかしたら、自分は歌で輝けるのかもしれない」って思いました。それから人前で歌うということがわたしにとって大切な時間になったんです。そうして徐々に、歌を歌う仕事がしたいという気持ちが芽生えていきました。

「喋ることと歌うこと」は同じような感覚

ーーそれ以前は人前で歌う経験はまったくなかったんですね。

鈴木:家族とカラオケに行くくらいでした。特定の好きなアーティストというのもまだいませんでした。ただ、TSUTAYAさんには毎週家族で行っていたので、流行っている曲はだいたい聴いていたと思います。高校に入ってからは東京事変さんがすごく好きになりました。

ーー「3年生を送る会」でいきなり人前で歌うというのは、かなり緊張したんじゃないですか?

鈴木:それよりも「絶対みんなわたしが歌うなんて思ってないだろうし、そこで歌めっちゃ上手かったら面白いだろうな」という気持ちが強かったです。みんなをアッと言わせたかった。あとはやっぱり、前年の「3年生を送る会」で先輩が歌っているのを見て、いいなあとは思っていました。なにか楽器をやっていたわけでもないし、たくさん音楽を聴いて育ったわけでもないけど、ずっと歌が好きだったんですね。歌でなにか大きなことができるんじゃないかという気持ちは、物心ついた頃から漠然とあったと思います。

ーー楽器はいつ頃から弾いているんですか?

鈴木:中学生の頃、お父さんがクリスマスにMorrisのギターをプレゼントしてくれたんです。でもその時は1週間くらい練習して、難しかったのですぐにやめちゃいました。ギターを少しずつ触るようになったのは、大学に入学して軽音楽部に入ってからですね。その頃には歌手系のオーディションをたくさん受けるようになっていたんですけど、全然受からなかったんです。1年で何十回も落ちていて。「なんでだろう……」って落ちこむと同時に、「自分の気持ちにぴったりな曲がないな」とも感じていて。「自分だったらこの音をこうしたいな、歌詞はもっとこうしたいな」と考えるようになりました。

ーー作詞作曲の始まりですね。

鈴木:そうしたなか、たくさん受けていたオーディションのひとつに、音楽スクールの特待生オーディションがあって。それに合格したんです。1年間、授業料が免除されてダブルスクールもできると。迷ったけど、こんなにオーディションに落ちるのには何か理由があるはずだし、自分の足りないところを知りたいから、スクールに通うことにしました。その時に「自分には弾けるものがない」と気付いてやっとアコギを真剣に練習するようになり、「自分の曲もないとだめだ」と思って曲をつくるようになりました。作曲といっても、最初は鼻歌にコードを4つ付けるくらいの簡単なものでしたけど、喋ることと歌うことを別のものとして考えずにやっていたので、わりとすぐに曲はできました。

ーー「喋ることと歌うこと」を同じような感覚でやれるというのは、友里絵さんのひとつの特徴かなと思います。友里絵さんの楽曲は、あえて歌詞をシンプルに書いて、メロディにうまく乗せることを優先しているように見えます。「伝える」ということに重きを置いている楽曲だなと思いました。

鈴木:わたしの場合は、難しい言葉やおしゃれな言葉より、自分のなかから素直に出た言葉の方が現時点では本質だし、人に届くと思っているんです。だから簡単な言葉を選んでいますね。難しい言葉やおしゃれな言葉が似合うようになれば、その時はそういう言葉をつかうと思います。

「人に言えずに自分のなかで殺している気持ちを見つけたい」

ーーそういう考えに至ったのはなぜだと思いますか? 「伝える」ことに重きを置くというのは、逆に言えば「伝わらなかった」という経験がベースにあるからなのかな、と思ったのですが。

鈴木:たしかに……。家族に自分の気持ちを伝えることが苦手だった時期はありました。わたしは人に何か言う前に「これを言ったら相手はどう感じるかな」って考え込んでしまうところがあるんです。「こういうふうに受け取られるかもしれないけど、そうじゃないんだよな……」といった、微妙な誤解を避けられないという気持ち。言葉では正確に伝わらないだろうな、という気持ちがあります。「伝わらない」という気持ちを抱いている人は自分以外にもきっといるだろうし、もしそうであれば、自分はひとりじゃないと思える。人に言えずに自分のなかで殺している気持ちを見つけたくて、表現を選んだのかもしれません。

ーーそれは小さい頃から漠然と感じていたんですか?

鈴木:思春期になって、人に本音を話すことが苦手になってからそう感じるようになりました。

ーーなにか、きっかけとなる出来事があったんでしょうか。

鈴木:小学生の頃までは、その日にあったことをお母さんに逐一報告していたんです。でも親って心配するじゃないですか。たとえば「〇〇さんとケンカした」って話すと、わたしのために怒ってくれたり心配してくれたりして、だんだんシリアスになっていく。でも自分としては、ケンカはしたけどその友だちのことは好きだし、「そういう意味で言ったんじゃないんだけどな」と思ってしまう。そういうことが積み重なって、相手が心配するようなことを言わない子どもになりました。

ーーなるほど。それは長女らしいエピソードです。親に心配かけまいと、友里絵さんなりに気をつかっていたんですね。

鈴木:そうかもしれません。中学生になってからは、以前と比べると家でもあまり喋らなくなりました。外では明るくふるまうけど、家で笑えなくなってしまって。楽しそうな自分を見せるのが恥ずかしくなってしまったんです。思春期っぽいエピソードですよね(笑)。だけど、本当はその隠している気持ちを誰かに知ってほしかったし、ちゃんと伝えたかった。そういう願いを込めて音楽を描きはじめたんだと思います。

ーー友里絵さんの音楽活動をご両親はどう見ているんでしょう?

鈴木:大人になってからは、親子であると同時にひとりの人間として接することができるようになったので、すごく良い関係です。音楽に関しても、始めた時からすごく応援してくれていて。特にお母さんはよく聴いてくれていて、「友里絵の曲はすっと心に入るのよね、泣いちゃった」とか言ってくれます。すごく励みになっています。

楽曲の背景にあるもの

ーー2016年には47都道府県ツアーをたった3ヶ月で達成したそうですね。ものすごいハードスケジュールだと思うんですが、なぜこんな大変なことにチャレンジしたんでしょうか?

鈴木:短い期間で、旅モードのままやった方が楽しいと思ったんです。長い期間をかけてやるのは逆に大変だと思って。

ーー3ヶ月間、東京には戻ってこなかったんですか?

鈴木:いや、4回くらい戻ってきました。やっぱり途中でCDも服も足りなくなるので。1週間ごとにお母さんに遠征先に服を送ってもらって、そのダンボールに洗濯物を入れて返してました(笑)。

ーーそれはおもしろいですね(笑)。

鈴木:観光もして、いっぱいおいしいもの食べて、楽しかったですよ! ちょうど大学を卒業して時間があったからできたのかもしれない。

ーー楽曲についても少し聞かせてください。『あなたのせいで、』という曲は、ブレス(息継ぎ)で終わることが非常に重要ですよね。タイトルに「、」が入っていることといい、かなりコンセプトを大事にして作曲しているんだろうなと推測したんですが、どうでしょう?

(鈴木友里絵『あなたのせいで、』MV)

鈴木:息を吸ったあとって、吐いたり喋ったりしますよね。吸う息で曲を終わらせることがポイントで、ここから始まるのかな、まだ言えてないんだな、という感情を表現したかったんです。読点が入っているのも、この「、」の先に続く想いを表現したかったからですね。

ーーこの曲は、それ以前に友里絵さんがつくった曲に比べて、抑制が効いている印象も受けました。歌われていることではなく「何が歌われていないか」が重要な曲でもあると思います。

鈴木:たぶん、ちょっと大人になったんだと思います。失恋の背景には大きな愛情があるはずなので、とても大事に書きました。

「2月12日のライブで、自分を証明したい」

ーーそんな「大人になった」友里絵さんですが、2月12日に渋谷『CLUB QUATTRO』にてワンマンライブ『ON STAGE!』を開催します。キャリア史上もっとも大きなキャパシティでのライブですが、このライブの開催を決めるのには勇気が必要だったんじゃないですか? どうしてこのタイミングだったんでしょう。

鈴木:以前から、『CLUB QUATTRO』の系列店のスタッフさんに「クアトロでワンマンやろうよ」と言っていただいていたんです。でも自信がなくて。ずっと悩んでいたんですけど、去年の夏頃、なぜか「もう決めよう」と思った瞬間があったんです。「わたしはきっと決めたらやるし、その一歩を踏み出さないと何も進まないな」と。きっと、悩み尽くしたんだと思います。これだけ悩んでも結局やらなきゃなにも変わらないわけだし、じゃあ、やろう!と。

ーー2月12日は、友里絵さんの26回目の誕生日ですよね。2018年も同じ日にライブをしていますけど、誕生日にライブをやろうと思ったのはなぜですか?

鈴木:クアトロでのワンマンを決めた時、ちょうど2月12日があいていたからです。じゃあ誕生日だしその日にしよう!となって。ファンの方にとっても誕生日にライブというのは覚えやすいですし。

ーーちなみにこれまでの誕生日って、なにして過ごしてました?

鈴木:ここ数年は毎年ライブでした。でも学生時代は……、2月12日って、もう受験期間でおやすみなんですよね。だから……。

ーー……察しました(笑)。

鈴木:みんな忘れちゃうから寂しいんです。だったらもう自分でやっちゃえ!と(笑)。

ーークアトロには19歳の頃に1度だけ、オーディションで立ったことがあるそうですね。今度は自分のライブで同じ場所に立つわけですけど、あの頃と今とで、自分の気持ちにどれくらい変化がありますか?

鈴木:根本はたぶん変わっていないと思います。ただあの時は、自分の夢を疑うことを知らずに、すぐに売れると本当にまっすぐ信じていた。今は、あの時の自分の夢を叶えてあげたいな、という気持ちです。あの頃信じていたものを嘘だと言いたくないし、自分を証明したい。過去の自分に胸を張れる自分でいたいと思っていますね。

「何代も受け継がれるような曲を」

ーー今回のライブに向けた特設サイトでは、「理想としていた26歳に全然追いつけていない」と悔しい想いを吐露していたのが印象的でした。

鈴木:自分の曲で誰かの心を動かすとか、人に何かを伝えるという点ではやりたいことができていたと思うんですけど、なかなか業界や大人に評価されないというか……。要するに、結果が出なかったんです。それはなんでだろうと考えることが多くて。自分が信じていることが間違っているのかもしれない、自分には才能がない、そういうふうに思うこともたくさんありました。

ーーそれでもなぜ音楽をやめなかったと思いますか?

鈴木:なんでだろう……やめるという選択肢はなかったと思います。極端に聞こえるかもしれないけど、「やめるなら死のうか」という気持ち。

ーーそれくらい友里絵さんの人生にとって音楽が大事だということですよね。

鈴木:それしか自分が生きている意味がないと感じているんだと思います。歌を歌って誰かと通じ合えた時、誰かの気持ちを変えられた時、自分の存在意義をもっとも強く感じられるんです。たとえば自分の部屋で、ひとりでイヤホンから流れる音楽を聴いている時、人生が変わるような瞬間を経験することがあります。そういう音楽も自分でもつくりたいんです。

ーー今後は、どんなアーティストを目指しますか?

鈴木:おじいちゃんおばあちゃんから子どもまで、みんながその曲をくちずさめるような、どの年代の人にも親しみやすいアーティストになりたいです。わたしのことを知らない人でさえも、その日常のなかにわたしの音楽があるような。たとえ言葉が古くなったり、サウンドが現代っぽくなかったりしても、名曲って、いつ聴いても名曲ですよね。何代も受け継がれるような曲をつくるのが夢です。

 

鈴木友里絵ワンマンショー ON STAGE!
主演:  鈴木友里絵
会場: 渋谷クラブクアトロ(SHIBUYA CLUB QUATTRO)
日時: 2月12日(火)  開場18:00 開演19:00
料金: 前売3600円 当日4000円(税込 整理番号付き)リンク代600円別当必要

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  問合:  TakeOff7  03-3770-7755

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